損害保険業界
国内の人口減少、自動車保有台数減少の中で、販売チャネルが多様化し競争激化
業界の概要
損害保険は海上保険や輸送保険などの海洋分野と海洋分野以外に大別され、現在は海洋分野以外が大きな割合を占めている。海洋分野以外では「動車保険、火災保険、傷害保険」の3つが大きな柱となっている。保険業法の改正による自由化の進展で、生命保険業界と同様に、ネット販売や銀行窓口販売など販売チャネルが多様化し競争が激化している。
自動車保有台数の減少や人口減の影響が大きく影響する損保業界では、 2010年4月に大規模な再編が実施された。これによりMS&ADインシュアランスグループ、東京海上グループ、損保ジャパン日本興亜グループの3大グループに集約。日本国内市場は、これら大手3グループを中心とした30社に外国保険会社などをあわせた合計52社(2015年3月現在:金融庁損害保険会社免許一覧より)で構成されている。
2014年1月には、金融庁は保険会社に対して保険代理店使用人の適正化について報告徴求命令を出した。これにより従来認められてきた保険代理店と雇用関係のない委託型募集人が保険募集することは原則禁止となった。(委託型募集人に関する適正化期間を2015年3月までとなり、保険会社の適正化対応が本格化。)2014年5月、参院本会議で改正保険業法が成立したことで、保険会社は、保険募集にあたって顧客の意向把握、顧客への情報提供が求められることとなった。また同法では、複数の保険会社の商品を取り扱う保険ショップなど現れたことで、保険代理店が募集人に対し、業務の特性や規模に応じた体制整備を行うことを義務付けるルールが導入された。
日本損害保険協会の発表によると、2014年4月~2015年3月の元受正味保険料は、8兆8,217億円(前年同期比3.0%増)となった。元受正味保険料は5年連続で増加。自動車保険および地震保険の保険料引き上げ、消費税増税前に駆け込み契約された住宅の引渡しが2015年3月期にずれ込んだことによる火災保険の契約数増加などにより、5年連続の増加となっ た。自動車保険料値上げなどで各社収益が改善保険料の引き上げに加え、交通事故の減少も追い風となり、主要損保では自動車保険の利益率が軒並み上昇した。また各社とも海外保険事業が好調、円安効果も加わり収益に貢献している。
活発な業界再編により、上位3グループ間のシェア争いが激化すると見られる。 損害保険に大きく影響を及ぼす自動車保有台数や住宅着工件数、企業の設備投資などが伸び悩むなかでは、今後成長が見込める分野(IT、代替エネルギー、介護・福祉など)で増加する新たなリスクに対応する保険商品の開発が重要になると予想される。また各社とも子会社などを通じた生命保険事業に積極的に取り組むと同時に、海外保険事業会社との連携も重要になる。
損害保険 元受正味保険料の推移
(出典:(一社)日本損害保険協会より)
損害保険代理店の推移
(出典:(一社)日本損害保険協会より)
損害保険業界のM&A状況
2010年4月の大規模な業界再編以後は、2014年9月に損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が合併し、業界最大規模の「損害保険ジャパン日本興亜」が誕生した。2014年12月には、あいおいニッセイ同和損害保険が子会社を通じて英国自動車保険のBox Innovation Groupの発行済株式総数 の75.01%を約200億円で取得。相次ぐ合併により集約が進んだ損保業界は、上位3グループの損保収入保険料が全体の9割を占める状況となった。
損害保険 主要企業
- ・東京海上日動火災保険 正味収入保険料収入3,127,638百万円(2015年3月期)
- ・MS&ADインシュアランスグループHD 正味収入保険料収入2,939,113百万円(2015年3月期)
- ・損害保険ジャパン日本興亜 正味収入保険料収入2,508,031百万円(2015年3月期)
損害保険 関連法規